文部科学省の外国語教材Bridgeについて(追記あり)
中学校では令和3年度(2021年4月)から教科書が変わります。
今年度、臨時休校で授業開始が遅れているからと言って来年度に積み残しをすると、新年度には教科書会社が異なる2つの教科書をまたいで授業しないといけなくなる可能性もあるということです。ややこしい!
しかも今年は、文科省から送られてきたBridgeも授業で使いこなさなくてはいけません。「授業の遅れ」はよくメディアでも取り上げられますが、新学習指導要領のことまではなかなか報道されませんよね。休校解除後の我々の手腕が問われます。
さて、そんなBridgeの教材研究を進めていく中で、勝手に要点をまとめたり良さや疑問点を語ったりしたいと思います。
- Bridgeがもらえるのは中1と中2だけ
- 新しい言語材料(文法)は5つ
- Bridgeは文法よりもコミュニケーション重視
- Bridgeの良さ①作りがシンプル
- Bridgeの良さ②本文の音声が無料で聞ける
- Bridgeの疑問点①ネットがつながらない教室でどうやって音声を聞くのか
- Bridgeの疑問点②いつ使うのか
Bridgeがもらえるのは中1と中2だけ
Bridgeは、正式名称「新学習指導要領対応中学校外国語教材Bridge」と言います。
令和3年度から、中学校で学習する内容が変わります。今までは高等学校で学習することになっていた、英語の文の形や表現などの内容の一部を、今後は中学校で学習することになります。 ──Bridge「はじめに」より
学習内容がどんどん前倒しになる中で、現行の学習内容と新しい学習内容の架け橋となるように文科省が作ったのがBridgeです。2020年4月時点で中学1年生・2年生の生徒に配布されました。
新しい言語材料(文法)は5つ
※本当は文法のことを言語材料と呼ぶのですが、ここでは慣れ親しんだ文法事項と呼びます。
Bridgeは全部で18のトピックがありますが、新しい文法事項は主に5つ。順番はバラバラに出てきます。各ページにはターゲットセンテンスの記載がないのですが、目次のページを見るとどの文法事項を学んでほしいかわかります。
- 感嘆文
- 原形不定詞(help, let)
- 名詞節の応用(that/what/ifの節)
- 仮定法
- 現在完了進行形
感嘆文は現行の教科書の中でもさりげなく出てきたりして、でもターゲットセンテンスには入っていないという気持ち悪い出方をしていました。やっと正式に教えられます。
名詞節の応用は、今までto不定詞が入っていたところにthat/what/if節が入る形です。
<ex> Children will be happy to see the funny race. (現行で習う表現)
→ Children wil be happy that it's a funny race.(トピック14より)
中学校でもI think that~などのthat節は出てきますので、what節やif節もその仲間だという原理を理解すれば簡単なのですが・・・なかなか簡単にはいかないのでしょうね・・・。
Bridgeは文法よりもコミュニケーション重視
こんな風に私はついつい「文法」という考え方をしてしまうのですが、Bridge(文科省)側はそういう教え方を望んでいません。あくまでもこの教材はコミュニケーションのためのもの。メインは右側のページなのです。(後述)
新しい文法事項を用いて、英語で読んだり書いたり話したりするコミュニケーションを通して理解することができるような構成としています。 ──Bridge「はじめに」より
Bridgeの良さ①作りがシンプル
新学習指導要領対応 中学校外国語教材 Bridge:文部科学省
冊子として配布されるのは中1,2年の生徒だけですが、↑のページから誰でも見ることができます。全ユニットとも、構成が
- 左のページ:本文
- 右のページ:Check , Talk , Write
というシンプルな構成になっており、余計な装飾は一切省いて読む・話す・書くに集中できるつくりになっています。(今の教科書は丁寧すぎるがゆえにごちゃついていて、どこが何のコーナーなのかわかりにくいです。そういう意味では文科省の教材の方がよりユニバーサルなデザインだと感じます)
今までの古き良き「文法説明→活動→本文」という流れの真逆、「本文→活動→文法説明」という流れで授業をしてください、という意図が伝わってきます。
Bridgeの良さ②本文の音声が無料で聞ける
ついにこの時代が来ました!
私が一番刺激を受ける英語教育2.0様の記事にも度々書かれており、全国の英語教師が望んでやまない意見「教科書本文の音声をネットで公開して聞けるようにしてほしい」。(教科書音声CD活用法 - 英語教育2.0)
文科省、やってくれました。利益を追求しないお国が無料で配るものだからこそなせるわざなのでしょうが、他の教科書会社も是非追随して頂けたらと思います。
各ページの右上にQRコードがあり、そこから音声の聞けるページに飛びます。
↓このページから誰でも聞けます。
Bridgeの疑問点①ネットがつながらない教室でどうやって音声を聞くのか
しかしこの音声、CD版は届いていませんよね・・・
私たちのようにネット環境が整っていない学校では、教室で音声を聞く術がありません。
声を大にして言いたい。
私たちのようにネット環境が整っていない学校では、教室で音声を聞く術がありません!
教師が自分で読むのでしょうか。(それでもいいけど)
教師が自費でwifiを接続するのでしょうか。(それは嫌だな)
今からでもいいのでCDを送っていただきたいです。文科省のどなたかに届きますように。よろしくお願いします。
Bridgeの疑問点②いつ使うのか
新しく追加された内容がどの学年で学習することになるかは、令和3年度以降に各学校で使用する教科書によって異なることになります。各学年の教科書で学習する内容をご確認の上、必要となる部分を、計画的にご活用いただけましたら幸いです。 ──Bridge「はじめに」より
このBridge、いつどのように使うかは現場に任されています。どのトピックを何年生で扱うという指示がないので、自由でもあり、計画を立てるのが難しくもあります。
文科省はどのトピックを何年で使用する、という目安を考えて作ったのでしょうか。この配置にしているということは①easy→⑱hardの設定だと思うのですが。
なんとなく①~④が1年生、⑤~⑧が2年生、⑨~⑱が3年生なのかなと思うのですが、感嘆文のあいだに③原形不定詞が入っていたり、原形不定詞のあいだに⑦仮定法が入っていたり、順番にどんな意図があるのかわかりかねます。
それか、3年生で復習の意味も兼ねて帯活動で①~⑱まで総復習でもいいんでしょうか。(「はじめに」には「移行期間中に学習することができるように」とありますが・・・)
Bridgeの手引き、ねらい、モデル使用例など、調べたところ見当たらないのですが、文科省の方はどういう想定で作られたのか知りたいです。
追記:英検情報Webが授業動画を公開しています!詳細は↓